こんにちは。

青年海外協力隊として2年間モザンビークで活動中です!

2010年10月21日木曜日

東大総長へのメッセージ

40度近い猛暑の中、厳しい現実に直面しつつも、何をすればいいのか、なかなか糸口が見つからず、辛抱の日が続いていたのですが、日本でお世話になっていた大学の先生から、とっても嬉しい連絡を頂きました。
先日、東大で行われた東大の濱田総長と、JICAの緒方理事長との対談にて、僕から送ったメッセージを取り上げてくださったそうです。
対談は大学とJICAの連携を記念したもので、タイトルは「~学生よ、世界に目を向け、世界に飛び出せ!~」。自分の卒業した大学と、いま所属している組織の対談であったので、お世話になっている先生から、「メッセージを送ってみたら」と言っていただいたことがきっかけです。
どこの大学もそうだとおもいますが、東京大学も国際化に力を入れており、国際化・多様化する世界でも活躍できる「タフ」な人材育成が、現在の総長が掲げるモットーです。
メッセージでは、大学在学中に培われたタフさがいかにアフリカでも大切かということを伝えたのですが、それは大げさでもお世辞でもなんでもなく、心底日々感じることです。
どんなに経験、技術、熱意があったとしても、それが相手に生かされるようになるには、絶望したくなるほどの相手との「距離」があり、それを乗り越えるコミュニケーションがどうしても必要だと思います。その能力がまだまだ自分には足りていないことは痛感しつつも、大学時代に昼夜を問わずに議論しまくっていた経験が大きな糧になったことは間違いありません。そうしたことが伝わればなと思っていました。
そして、こうして自分のような「奇異」な進路が、経験の蓄積や言論を通して「普通」になっていき、日本がさらに多様性に寛容な社会になっていくように、将来への希望もこめて。

(以下、総長に送ったメッセージです。)
***

結論から申し上げます。アフリカのモザンビークという国に来てから2ヶ月が経ちましたが、多くの場面で大学在学中に学んだ「タフ」さの重要性を痛感しています。

私は入学当初から国際協力に興味があり、教養学部で国際関係論などを学んだ後、経済学部に進学してからは開発経済を専攻するゼミで2年間勉強しました。
ゼミでは学生が主体となってフィールド調査のため途上国に訪れ、調査内容を中国や韓国の大学生向けに発表するなど、大変活発なゼミでした。
開発分野の研究や政策の重要性は感じつつも、先進国での研究では途上国の人が望む「開発」を考慮する難しさを感じ、
まずは現場で現地の人と「開発」について考え、直接対話しながら活動できる青年海外協力隊としてアフリカに赴任しました。
モザンビークでは公立の孤児院の教育担当者として、孤児に対する基礎教育の直接指導や孤児の生活改善のプログラムの立案を行っています。

濱田総長は平成21年度の入学式の式辞の中で、タフさについて以下のように述べておられました。
「ある知識を自分で納得するだけでなく、人に伝えること、人を納得させることには、一つの力が必要です。そして、コミュニケーションの相手というのは、自分と同じ価値観や人生観の人ではないことが、むしろ普通です。相手との差異を超えて、知識を伝え、受け取ることができる力、また、互いに論じ合うことができる力、それが「タフ」であるということです。」(一部表現短縮)

途上国の現場で活動をしていると、国際協力の舞台で活躍する人材というのは、まさにこの「タフさ」を身につけた人材なのではないかと感じます。
たとえば、私がモザンビークのストリートチルドレン(学校に行かず、道で洗車等をして生活している子ども)に対して教育の重要性を伝えようとするときのことです。
単に、「勉強をして学校を出れば、将来就く仕事の幅も広がるし、世界も広がるよ」という「知識」を伝えたところで彼らの行動は変わりません。
それは、彼らには彼らの理由もあるからです。
たとえば、「学校に行っても先生は来ない」「自分は親に宿題を教えてもらえないから、学校で馬鹿にされる。」「洗車の仕事は、やったら必ず報酬がある。」など。
そのため、彼らの持つ理由を聞いて整理し、そこで自分の考えていた「知識」の妥当性を再検討したうえで、彼らの目線に立ってもう一度自分のメッセージを伝える、そこまでしなければ知識が力を持つことはありません。
(相手が本当の理由を話してくれるためには「徳」にあたる人格性まで求められること、
また言語能力は全ての基盤であることは言うまでもありません。)
先の例で言えば、学校を卒業することの重要性よりも、たとえば文字の読み書きや簡単な計算ができることによって、彼らの日常生活がより公正で、豊かになることを伝える方が効果的でしょう。
途上国と一概に言っても、地域や村、そして個人によって価値観や知識のレベルは全く違うため、自分の知識とコミュニケーション力を「総動員」し、常に相手に伝わることを意識し続けなければ、その人や地域が変わることもないのです。
まさに「タフなコミュニケーション」が求められていることを、日々実感しています。

そうしたタフさを身につけるには、大学時代のトレーニングは貴重なものでした。
・同じ知識を学ぶときにも、一人で学ぶのではなく、留学生や友人とともに議論しながら学ぶこと
・自分の考えを発表し、それを先生や仲間から批判してもらうこと、その批判に自分が答えること
・全く違う専攻の友人から違う視点で意見をもらい、こちらの意見も相手にわかるように伝えること
こうした経験の全てが今の自分の役に立っていると思います。

以上の経験から、今回の対談や今後のイベントを通じて「タフさ」の重要性がより多くの学生に認識され、
国際化やバリアフリーを通じて、ますます多様な環境が整備されることは、
卒業生が海外で活躍することにも直結すると強く信じています。
卒業生としてそのような環境で勉強が出来たことに心から感謝するとともに、
今後の益々の発展をお祈り申し上げます。

2 件のコメント:

  1. ともじのブログの内容はいつも考えを深めさせてくれるものだと思っています。
    私にとっては、AFRICAに学べっ!に学べ!

    という感じで。

    あなたはやっぱり、ただの東大卒の人間ではない。

    うらい

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  2. はじめまして。偶然通りかかって、日記を見させてもらいました。
    あなたの志や行動力に古臭い言い方ですが心を打たれました。
    今の自分はなんて甘ったれなんだろう!環境のせいばかりにして、辛いことから逃げてばかりいて考えることから逃げていて、、、
    もっと現実と向き合わなくちゃ!と
    いろいろ考えさせられました。

    ありがとうございます。

    次に続く2年生の男の子の話を読みました。
    とっても精神的にもたくましいこですね!そして
    そんな環境の中でも勉強したいって思っている。きっと将来すごく立派な人になるのかなぁ。
    でもそのせっかくの芽がつまれてしまわないことを
    願います。
    あきらめきっている大人たちの中で、
    子供のことが好きで、子供の可能性を信じている
    Okuboさんみたいな人がもっと増えるといいんでしょうけど、
    一人でもそういった存在がいることはその子にとっても
    すごくプラスだと思います。
    でも成績票がないから授業受けれないなんてナンセンスです。
    現場にいる人の大変さをわからない人間が無責任かつ
    偉そうにすみませんが、
    しつこいぐらいに学校にいって、
    その男の子が授業をうけれるように交渉がんばってください!!
    応援してます!!

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